続き… ページ16
春の日差しが当たれば温かいが室内はまだ暖房がほしい。
「…一時的に記憶を無くすことはよくあることなんだ。」
「……そか。」
Aは目覚めて容態も安定したので個室に移動することになった。
今も外の景色を不思議そうに眺めている。
「記憶っていうのは本みたいなもので、何冊も何十冊も存在するんだ。
本人の思う人生の節目によって変わる。例えば、年齢、思い出。
たまに本のページを破られたり、本自体をなくしたり。どこにあるのか分からなくなったりする。
まあ、心理学は専攻してないけど、詳しいやつがいないか同期のやつに聞いてみるよ。」
「………ありがとう。」
しばらくして、ふと視線を感じる。
ふり返ると、隠れているつもりか擦りガラスの向こうから覗いている。
パチッと視線が交錯すると驚いてすぐに顔を引っ込めてしまう。
「A……？そっち寒いやろ。こっちおいで？」
警戒されてるのかAは人見知りだったからな、
それに知らない男が名前を呼んでこっちへ来いと言ったところで警戒は強まるのは明白だ。
まあ仕方ないだろう。
そう思うのに、今すぐ抱きしめたい衝動がさらに俺を寂しくさせる。
諦めて外を眺めようと窓を見るとパタパタと控えめなスリッパの音が近づいてくる。
『あ、あのっ………貴方の名前は…？』
「……シャオロン。シャオロンや。」
名前を聞かれた、もう数年前に終わらせた会話をまたやり直している。
聞いてくれた、嬉しい。
聞かれてしまった、悲しい。
『私……、何も覚えてなくって…。ごめんなさい。』
「いいや、謝ることやないよ。なんでAが記憶喪失なったか、ぺ神から聞いたか?」
Aはふるふると顔を横に振ると俺の向かい側の椅子に浅く座った。
『私、知りたい。私のこと、……シャオロンさんがどんな人なのか。』
「……………」
どうして、なんて野暮なこと聞けなかった。
『お医者様に聞いたの。私が死にそうだと聞いて1番に駆けつけたのは貴方だって。』
『私、貴方のこと忘れたくなかったんだと思う。だから、思い出せないけど、思い出したい。』
どこまで行ってもAはAだった。
どう考えても俺のことを思い出すより、自分の明日を恐れるべきなのに。
『だって、貴方の哀しそうなお顔を見てるとこんなに、胸が苦しいんですもの。きっと私の大切なひとだったんでしょう？』
涙が溢れそうになった。
いや、溢れた。
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Ｒ(リン)(プロフ) - るるるアールさん» ありがとうございます！めっちゃ嬉しいです！！頑張るのでぜひ楽しんでくれると嬉しいです！！ (8月24日 11時) (
レス) id: db93c912f5 (このIDを非表示/違反報告)
るるるアール(プロフ) - 初コメ失礼致します！上手く表現できないんですけど、書き方とかすごく好きです！これからも更新頑張ってください！応援してます！ (8月24日 11時) (レス) id: 42687bb38a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：オバケ x他1人 | 作成日時：2023年6月15日 19時
