豹変 ページ20
○聞こえた言葉も、向けられる眼差しも。それら全てが本当に目の前の人物から発せられたものなのかと。私は思わず目を見開いたまま絶句してしまった。
「役目を放棄されると困るんですよ。貴女は悪役なのですから」
「悪役……？」
「ええ。傲慢で欲張りで自分の思い通りにならないとヒステリックを起こし、周りから煙たがられ誰からも嫌われる惨めで滑稽な役割。そしてヒロインを虐め、ヒロインを愛する主人公達から怒りと憎しみを買って断罪される……それが貴女の役目」
ニィ、と彼女の口角が吊り上がる。細められた瞳からは悪意のようなものを感じる。
そこでようやく私はこの幻のような光景が現実であることを確信し、彼女は猫を被っていたんだと理解することが出来た。けれど流石にその変貌ぶりにはショックを隠せず、表面では平静を装うも内心は動揺していた。
「なのに貴女は突然それを放り投げた。生徒会から抜け、喉から手が出るほど欲しかったものや自分の取り巻いていたもの全てを捨てた。そして今や優等生のような態度で、陰日向でひっそりと学園生活を送っている。はあ……そんなの、ちっとも悪役らしくありません」
悪役。此方を見ながら彼女は頻りにそれを繰り返す。
私が、悪役？ 確かにエーラット嬢の行いはそれに相応しいものかもしれないけれど。彼女はまるで、私が何かの物語の登場人物でその役を途中降板したかのような口振りだった。そしてそれを咎めているみたいだ。
それを聞いている内に、私の腹の底から熱いものがふつふつと込み上げてきて。正直、腹立たしさを感じた。
はっ？ 役割？ 知らんわそんなもん。勝手に決めるな。と声に出さずにそう吐き捨てる。
「貴女はただ私がグルッペン様達に愛される為に、道化を演じてくれれば良かったんです」
歪んだ笑みを浮かべる彼女。それは、誰からも愛されるヒロインのような存在がおよそしてはいけないものだった。ゾクリ、と背筋に悪寒が走る。もはや目の前にいる彼女は私が知っている清廉な令嬢ではなかった。
まさか彼女にはこんな裏の顔があり、しかもこれほど歪んだものだなんて誰が予想出来るだろう。私ですら幻滅したんだから、生徒会メンバーが知ったら幻滅どころか裏切られたと思うかもしれない。
全く、欲張りなのは一体どっちやら。そんなに周りからちやほやされたいのか、こいつもエーラット嬢も。きっと私にはその心理を理解出来ることは一生無いんだろう。
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抹茶ちよこ(プロフ) - にゃーちゃんさん» コメントありがとうございます✨面白いと言って頂けてとても嬉しいです！基本シリアスな内容なので読者様からしたらつまらないのでは…と実は心配してました(苦笑 応援ありがとうございます。頑張りますので最後までお付き合い頂けたら幸いでございます！ (4月11日 22時) (
レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します。めっっっちゃ好きです！！夢主ちゃんの性格とかも好みで面白いです！思わず一気読みしてしまいました…更新頑張ってください、楽しみにしてます！ (4月11日 0時) (レス) @page15 id: 71312ff6fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年3月23日 18時
