知らないその眼差し ページ8
○残された体力を振り絞ってでも文句の一つでも言ってやろうと思ったけど、やめた。相手があのシャオロン様では。何も言えない。と言うか関わりたくない。こんな所で偶然にもぶつかってしまうだなんて、今日はとことん運が無いようだ。
早々に此処から立ち去ろう。と思ったけれど、如何せん体が動かない。今のダメージが相当堪えたのか、あるいは気張っていた心がぽっきり折れてしまったのか。立ち上がることさえ困難になっていた。
もう少し痛みが引けば、体力が回復すれば動けるかもしれない。このまま廊下に座った状態があまり良くないのは勿論分かっている。端から見ればきっと惨めな姿だろう。けど今はそんなことを気にしていられない。動けないのではどうしようもないのだから。
さあ、怒らないしこのまま黙っているから、とっととどっかに行ってちょうだい。と私は俯き荒い呼吸を繰り返しながら彼らが立ち去るのを静かに待った。彼らもまた私から離れたそうにしていたからすぐいなくなるだろう。
そう思っていたんだが、私の側にしゃがんでいたシャオロン様は何故か其処から動こうとはせず。ただこちらを黙って見つめている気配がする。
「……お前、大丈夫か？ どっか痛いんか？」
それに疑問を抱いていたその時、予想外な言葉が聞こえて私は一瞬自分の耳を疑った。嘘でしょ。あの彼が、私のことを心配している？ そんな馬鹿な。不調の所為で遂に耳までおかしくなってしまったのか。
思わず顔を上げると眉を顰める彼と目が合う。その瞳からは何だか気遣わしげな視線を感じるような。気の所為だろうか。いや、きっと気の所為だろう。弱くなっているからそう見えているだけなんだ。彼が私を気遣うなんて。そんなこと、ありえない。
私は再び俯き、それを見なかった振りをした。
「大丈夫、です……」
彼が立ち去らないなら私が動かねば。少し休んだからちょっとだけ体力が戻った気がして。今なら行けそう。私はぐっと体に力を入れ、痛みを我慢しながら立ち上がろうと試みる。
産まれたての子鹿みたいに。酷くゆっくりとした動きで何とか立ち上がることに成功した──かと思ったその時、ズキンと頭の奥が痛んだ。思い切り顔を顰めた次の瞬間、ぐらりと体が揺れる。マズい、倒れる！
「──ッ⁉︎」
「……っ、ふう、あっぶなあ」
衝撃に備えて身構えたけれど、それは訪れることはなかった。
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抹茶ちよこ(プロフ) - にゃーちゃんさん» コメントありがとうございます✨面白いと言って頂けてとても嬉しいです！基本シリアスな内容なので読者様からしたらつまらないのでは…と実は心配してました(苦笑 応援ありがとうございます。頑張りますので最後までお付き合い頂けたら幸いでございます！ (4月11日 22時) (
レス) id: ea5fcbb4a4 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します。めっっっちゃ好きです！！夢主ちゃんの性格とかも好みで面白いです！思わず一気読みしてしまいました…更新頑張ってください、楽しみにしてます！ (4月11日 0時) (レス) @page15 id: 71312ff6fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年3月23日 18時
